星の瞳に映るオルタナティブ: 典型的少女マンガの再評価を目指して

Translated title of the contribution: The Alternative Reflected in Starry Eyes: Negotiating Mainstream and Alternative Qualities in "typical" Shōjo Manga

Masafumi Monden, Lucy Fraser

Research output: Chapter in Book/Conference paperChapter

Abstract

少女マンガのスタイルは多様性に富んでいるが、花、リボン、ひらひらしたドレス、そしてきらきら光る星のようなハイライトの入った大きな瞳を持つ純真無垢な少女 といった、少女マンガ特有とされる視覚的表現が存在する。しかし、それによる少女マンガ観を具現化した作品群は、ほとんど研究対象とされてこなかった。少女マンガ研究はむしろ、既存のジェンダー概念から逸脱する「オルタナティブ」な作品に注目してきたのである。 本論では、まず「男性性」を装う、つまりは「女性性」を拒絶するキャラクターを通して性的役割のステレオタイプを打破しようとした試みを中心とした少女マンガ研究の主流を確認する。その功績は評価に値するが、それによって「少女らしい」視覚表現と「極度に女の子らしく」描かれた主人公を特徴とする、「メインストリーム」性の高い少女マンガが注目されずにきたことも事実である。この大きな研究格差に取り組むに当たって、きわめて「少女らしい」外見を持ちながら強靭な意志力と自主性のある主人公を描く宮脇明子の少女マンガ「金と銀のカノン」(1984)を検証する。 「メインストリーム」の少女マンガとは、規範的な性的役割をあまりにも肯定しすぎるもの、日本女性が耐えてきた家父長的な抑圧を再生産するものとして理解することができる。例えば、少女マンガの王道は「これといって取り柄のない平凡な女の子が、お金持ちで華やかな美人のライバルを押しのけて、スポーツ万能で成績もよくハンサムな男の子から恋人として選ばれるというラブ・ストーリーであった」(木村1998: 78)とされることが多く、理想化された異性との恋愛がヒロイン(そして読者)の自己を肯定させると見なされてきた。しかしながら、「金と銀のカノン」は、とても野心的で行動的な少女を主人公としていると同時に、彼女らの関係を重要視するという少女向けの小説とマンガの伝統に沿っているように思われる。これによって女性キャラクターは、主として男性キャラクターとの関係の観点からしか描かれないことも免れている。結果として、「金と銀のカノン」は典型的「少女マンガ」の視覚表現を踏襲しながらも、末次由紀の「ちはやふる」などと同様に、少年マンガと少女マンガのクロスオーバーを成し遂げたといえる。このような作品は、少女マンガ文化の一般的属性を表しているが、「メインストリーム」性と「オルタナティブ」性を真っ向から対立させるというより、むしろ共存させているのである。言い換えれば、女の子っぽいマンガ表現は、必ずしも「メインストリーム」的でないジェンダーとアイデンティティーの概念を綺麗に包み込み、表現することができる。このように今まで注目されてこなかった作品に焦点を当てることで、少女マンガ研究における「女性性」と「男性性」を再評価し、より掘り下げることが可能である。したがって、本論では、典型的少女マンガにおける「メインストリーム」と「オルタナティブ」あるいは「斬新な前衛性」と「穏健な現状維持性」の微妙な共存を追究する。
Original languageJapanese
Title of host publicationマンガにおけるオルタナティブの多面性 /​ ジャクリーヌ・ベルント編
EditorsJaqueline Berndt
Place of PublicationKyoto
PublisherKyoto Seika University International Manga Research Centre
Pages149-175
ISBN (Print)9784905187127
Publication statusPublished - May 2015

Publication series

Name国際マンガ研究 (Global Manga Studies)
Volume5

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Cite this

Monden, M., & Fraser, L. (2015). 星の瞳に映るオルタナティブ: 典型的少女マンガの再評価を目指して. In J. Berndt (Ed.), マンガにおけるオルタナティブの多面性 /​ ジャクリーヌ・ベルント編 (pp. 149-175). (国際マンガ研究 (Global Manga Studies); Vol. 5). Kyoto: Kyoto Seika University International Manga Research Centre.